研究概要 |
本研究では,層間樹脂層を制御してベースラミナとの界面領域まで拡散させ,炭素繊維の阻止によりき裂を高靭化層内にとどめ,層間強度を飛躍的に向上させることを第一の目的とする.さらに,複合材料構造物の長期使用では,疲労,衝撃等の損傷の修理が避けられない.このため,層間高靭化層を熱可塑性樹脂として,再溶着させることにより,修理可能なインテリジェント材料とするとともに,その修復後の信頼性向上を図ることを第二の目的とする.本年度の成果は次のように要約される. (1)アイオノマーフィルムの厚さ依存性:フィルム厚さは10〜100μmと変化させ,モードIおよびモードIIの層間破壊じん性を調べた.モードIについては,フィルム厚さが小さいときは,厚さの増大とともに著しくじん性値が増加するが,厚さが25μmを超えると,増加の割合が小さくなった.一方,モードIIでは,フィルム厚さの増加とともにじん性値は連続して増大し,フィムル厚さが200μmの場合は10kJ/m^2と,すでに報告されている各種材料の値の中で最高値を与えることがわかった. (2)疲労き裂伝ぱ特性の応力比依存性:平均応力を変えた疲労負荷を与え,疲労き裂特性を評価した.応力比依存性は,アイオノマーを挿入する前と変化せず,き裂進展抵抗は上昇するものの,破壊機構は比較的脆性的であることがわかった.
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