研究概要 |
本年度は,イオン局在化分布を測定するためのシステムとして市販の微小Pt電極(電極先端直径:20μm)および自作した微小Pt電極を保持時間50msの方形波を用いてアノードとカソード方向に分極することにより,同一電極を用いて塩素イオン濃度と水素イオン濃度分布を同時に測定できるChronoamperometric Mode測定が可能なシステムを開発・改良した。これを用いて腐食ピットの内部と外部の溶液性状(pH,Cl-イオン濃度)を測定できることを確認し,イオン選択性電極との比較を行った。併せて,基本的腐食特性と応力腐食割れ特性を明らかにするため,超高強度P/M系Al-Zn-Mg合金とTi-6Al-4V合金の低サイクルの大変動応力下のき裂進展特性について検討した。ここでは,特に環境効果として,乾燥空気を参照環境として,3.5%NaCl水溶液の影響とき裂採取方向の影響を検討した。併せて,微小機械要素として,近年注目を集めているSi単結晶微小機械要素を対象として,破壊特性に及ぼす水環境の影響について検討し,水環境中では破壊強度が低下することを明らかにするとともに,原子間力顕微鏡を用いてナノメータオーダの表面損傷を検討した結果,水環境中ではナノメータオーダの局部腐食部が生じるとともに,その局部腐食領域に(111)面に沿った深さ十数nmオーダのき裂状損傷が,環境と動的応力の相乗効果により生じていることが示し,原子間力顕微鏡観察の有用性を明らかにした。
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