研究概要 |
本年度はセラミックス溶射切欠き材の実験に入る前段階として,モノリシックセラミックスの疲労特性評価と基材となるステンレス鋼切欠き材の疲労試験を重点的に行った.得られた主な結果は以下の通りである. 1. モノリシックセラミックスに発生したき裂の開閉口挙動をレーザスペックル法により観察した.その結果,得られた応力拡大係数Kとき裂開口変位CODの関係は極めて複雑なものとなった.これはセラミックスに発生したき裂面に粒子架橋が存在するためで,き裂の長さが変化しないときでもこの粒子架橋効果が変化することにより,K-COD関係の勾配は変化する,あるいはき裂長さが変化してもこの勾配が変化しないときがあることがわかった.これら粒子架橋の影響を考慮したき裂先端において有効に作動している応力拡大係数としてKtipを評価し,き裂進展挙動を再吟味した結果,セラミックスにおけるき裂の進展にはこのKtipがき裂進展駆動力として最も有望であることがわかった. 2. セラミックスの高温疲労強度について調べた結果,1173K〜1273Kの範囲では静疲労強度に比べて片振り動疲労下の強度がわずかに強くなる一方,両振り疲労強度はこれらの疲労強度よりはるかに高い結果となった.これは高温下において圧縮荷重が材料を強化する効果があることを示していた.同じくき裂進展試験を行った結果も先の結論と同様,両振り負荷下でのき裂進展抵抗が最も高くなっていた. 3. 切欠き底の2軸応力状態を詳細に調べるために,レーザスペックル2軸ひずみ計測システムを構築した.これを用いて数種の切欠き形状を有するSUS304鋼試験片について疲労試験を行った.その結果,切欠き底に発生する引張り軸方向ならびにその直行方向ひずみは材料の繰返し硬化・軟化挙動をそのまま反映するが,その比率は時間に依らず一定値であることが分かった.またこのひずみ比や繰返し硬化・軟化挙動の程度は切欠き底曲率半径と負荷レベルだけの簡単な関係で支配されていることが分かった.
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