研究概要 |
高温機器に用いられる溶射部品には必ず形状不連続部が存在し,高温疲労条件下ではこのような形状不連続部が疲労き裂発生の起点となる.本研究はこのような溶射切欠き材の高温疲労特性を明らかにすることを試みた.まずどの程度の鋭さの切欠きまで溶射が可能かを調べた.その結果曲率半径1mmまでのステンレス鋼切欠き材にアンダーコート,トップコートが可能であることがわかった.そこでこの鋭さまでの切欠きに対して溶射被覆材を作成し,これの高温疲労特性を調べるとともに切欠き底の2軸ひずみをレーザスペックル法により計測した.切欠き底では平面ひずみ状態に近く板厚方向のひずみは極めて小さいことがわかった.これに対して荷重軸方向のひずみは応力集中もあって極めて大きな値が計測された.種々の試験温度,試験荷重において切欠き底ひずみの変化の様子を調べた結果,極めて安定な応力-ひずみヒステリシス曲線が得られた. また平滑試験片との疲労寿命の差異を調べた結果,切欠き材の方がむしろ長寿命となることがわかった.この原因としては切欠き底における繰返しひずみ硬化/軟化挙動の進行が切欠きでは拘束によって自由にならないことが考えられた.また縦断面観察の結果,繰返しのごく初期に発生する皮膜割れと基材に発生するき裂は同一のものではなく,皮膜割れとは独立に基材割れが発生していること,すなわち皮膜は基材の寿命にあまり影響を及ぼさないこともわかった.
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