研究概要 |
シリコン基板へスッパタリングにより形成されたTiNおよびHfN薄膜中の残留応力低減に及ぼすSi^+イオン照射条件(膜厚,イオンエネルギなど)の影響を調べた.得られた主な結果は次のとおりである. 1. 残留応力低減に及ぼす膜厚とイオン照射条件の影響の実験的検討 (1) シリコン基板(厚さ0.5mm)に種々のバイアス電位(0〜-360V)を作用させてスパッタリングにより200〜600nmのHfNの薄膜を基板上に形成した. (2) 基板の曲率測定によって薄膜中の残留応力を算出した結果,-4〜-6GPaの大きな残留応力が測定された. (3) タンデムタイプ加速器により薄膜表面に垂直にSi^+イオン(イオンエネルギは450〜1500keV)を照射した.このとき薄膜直下のシリコン基板がアモルファス化した.アモルファス層の厚さを電子顕微鏡観察により測定したところ100〜650nmであった. (4) 薄膜中の残留応力のイオン照射による低減を基板の曲率測定によってを算出した.いずれのイオンエネルギの場合もおおよそ-1GPa程度まで残留が低減した. 2. マクロ弾塑性解析による残留応力低減のメカニズムの検討 実験より得られた極めて大きな薄膜の残留応力低下がアモルファス層形成によって可能であるか否かを多層はり理論を用いて検討した.このとき,薄膜/基板の端部では基板と薄膜の間に大きなせん断応力が作用するのでその影響についても検討した.その結果,アモルファス層形成によって生じる残留応力の低減は極めてわずかであることがわかった.
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