本研究では、複合材料に発生する損傷として、FRP直交積層板の90°層の横き裂と粒子分散複合材料の粒子-マトリックス界面はく離損傷を取り上げた。FRP直交積層板の横き裂損傷の発達に関する研究で得られた成果をまとめると次のようになる。 ・亀裂が発生する層の平均応力を計算するとき裂発生以後応力は徐々に低下していき、この層の構成式は加工軟化材料として定式化できる。 ・塑性の降伏面を、ここでは損傷面とみなす事によって近代的な塑性力学の定式化を用いることができ、き裂発生層を加工軟化材料、健全層を異方性弾性材料と見なして、エネルギー等価原理をもちいて積層板理論を構築した。 ・その結果き裂の発達挙動、き裂発生後の弾性率の低下などを精度良く理論的に予測できるようになった。またその結果は実験とよく一致した。 ・上記の理論を用いてき裂が存在する場合のLamb波の伝搬速度を計算し、その値や音響異方性を実験と比較して良い一致を得た。 一方、粒子分散複合材料に関しては以下の成果を得た。 ・ガラス粒子に離型剤で表面処理をするかあるいは離型剤を直接樹脂に混入して成形することにより粒子-マトリックス樹脂界面の強度を制御できる。 ・界面き裂の発達によって応力-ひずみ曲線は極端な非線形性を示し、界面強度が弱くなって損傷が亜hったつする似つれて破断ひずみは急激に増大する。 ・損傷力学的考察によって、損傷後の弾性定数の低下の様子を記述することができる。 ・それを用いて、超音波の音速を計算し、音速の値や横波超音波の音響異方性などの実験値と比較し、良い一致を得た。 これらの結果から・複合材料の損傷をミクロな硬化を考慮してマクロな方程式で定式化し、またその結果を超音波を用いた非破壊評価と結びつけて複合材料の信頼性向上結びつけることができた。
|