研究概要 |
本研究は、スパッタリング時のグロー放電の発光分光分析をプラズマのプロセスモニタとして積極的に利用することで、2源反応性スパッタリング法による(Ti,Al)NやTiCNなどの多元系窒化物薄膜作製を高精度化することを目的とした。そのため、グロー放電発光の分光スペクトルをコンピュータに取り込み、波長365nmに見られるTiの発光強度信号が一定となるように窒素導入量を制御するPEM(Plasma Emission Monitoring)法が可能な2源反応性スパッタリングシステムを構築した。この装置を用いて、(Ti,Al)N、TiCN薄膜、およびその構成要素であるTi-N、Al-N、Ti-C、C-N薄膜の作製を行った。3元系窒化物の場合は、Ar分圧および2つのターゲットへの投入電力比は一定とし、種々の窒素分圧下で薄膜を作製した。 その結果、(Ti,Al)N薄膜については、Arガス圧およびTi、Al各ターゲットへの投入電力を一定とした条件下で窒素ガス分圧を増加させていくと、分圧が低い領域で投入電力比から予想される組成よりAlリッチな薄膜が成長する現象を確認した。このことは、TiおよびAlと窒素分子の反応性が異なることに起因していると考えられる。また、Ti:Al=40:60程度とAlリッチになってもNaCl型の結晶構造を維持できることも明らかとなった。 一方、TiCN薄膜について、Arガス圧およびC/Ti電力比を一定として窒素分圧を変化させて実験を行った結果、C組成は窒素分圧の増加とともに一旦減少した後増加する現象が認められた。これは、Cターゲットの窒素による化学スパッタリングによって生じているものと推察される。また、膜内のC量が多い場合、窒素を添加することによって非晶質の薄膜が成長するようになることが明らかとなった。
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