研究概要 |
近年,従来から行われている表面改質に対して,複数の表面改質処理を組合せる,いわゆるハイブリッド表面改質による更なる強度向上が注目されはじめた.ここで挙げるハイブリッド表面改質には,無限の組合せが存在するわけではない.すなわち,表面改質の大部分は熱処理の一種であり,熱処理同士の組合せを行った場合,第一段階で行う処理効果が消滅もしくは減少する恐れがある.したがって,ハイブリッド表面改質の第二段階の処理としては微粒子ピーニングやコーティングなどが有力である. 微粒子ピーニングの原理は,従来のショットピーニングと同様であるが,極めて微細な粒子を用いることにより,ショットピーニングとは異なる特性を示す.すなわち,種々の微細な粒子の組合せ,処理法の相違などにより従来法では考えられない現象が報告されてはじめている. 微粒子ピーニングに関する報告例はいくつかみられるが,微粒子ピーニングと他の表面改質法の組合せによる,ハイブリッド表面改質材の疲労強度特性に関する研究報告は極めて少ない. 以上の観点より本研究は,機械構造用クロムモリブデン鋼に,真空浸炭,浸炭窒化,微粒子ピーニングおよびこれらを組合せたハイブリッド表面改質処理を施して,これらの表面改質効果を引張疲労強度特性あるいは三点曲げ疲労強度特性および疲労き裂進展挙動などから詳細に検討し,ハイブリッド表面改質材の信頼性評価に関する検討を行った. その結果,ハイブリッド表面改質材の疲労強度は従来の単一処理による表面改質材と比較して著しく向上することを明らかにした.また,ハイブリッド表面改質材の疲労によるき裂発生寿命も顕著な向上を示すことから,今後,この種の表面改質処理が繰返し荷重の作用する機械・構造物への適用が進むものと考えられる. さらに,微粒子ピーニング処理を行う際に重要な点は微粒子の速度やワーク表面に衝突する際の温度である.本研究の一環として,微粒子ピーニング時の微細な粒子の速度,および,この粒子が材料表面に衝突した際の材料表面近傍における温度分布などについて数値解析を行い,微粒子の速度およびワーク表面に衝突後の表面およびその近傍の温度分布を明らかにした.
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