研究概要 |
本年度は,コーティング先端耐熱超合金の微小き裂損傷評価のための基礎的研究として,インコネル738LC Ni基超合金角柱試験片(幅5m.高さ10m)に幅0.05mmの人工模擬き裂を放電加工により設けたものの交流電位差法による検出実験を実施した.なお,き裂は単一き裂のみではなく,1,2,3,5本の複数き裂についても実験を行った.交流電流は1Aを通電し,4端子法で測定した.交流電流の周波数は200Hz〜5kHzを用いた.試験結果から以下のことが明らかになった. (1) 同一き裂本数,同一き裂深さでは,高周波数ほど,高い電圧が測定された.これは交流電流の表皮効果によるものであり,インコネル738LCにおいても明瞭な表皮効果の存在することが確認された.200Hzでの電位差に比べて,5kHzでは約2倍の電位差が検出された. (2) 単一き裂については,き裂深さが浅い範囲では高周波側の交流電流が感度が良く,き裂が深くなると高周波側の電位差は感度が悪くなる傾向にあった.逆に,き裂が深くなると低周波側の電位差の方が高感度になった.このことは,高周波側の交流電位差法はき裂が浅いほど有効であるが,き裂が0.5mm程度になると,低周波も高周波も優位差がなくなることを示している. (3) き裂が浅い範囲での周波数の上昇に伴う電位差増加量はき裂の本数が小さい範囲では小さく,き裂の本数が増えると大きくなることが判明した.このことから,交流電位差の周波数依存性をうまく利用すれば,き裂深さのみではなく,き裂の本数も決定できる可能性が示唆された.
|