研究概要 |
繊維強化金属基複合材料は高性能な新素材の一つとして注目され,実用的には母材として析出強化型合金を用いた複合材料などが検討・開発されつつあるが,これら金属基複合材料の実用化や信頼性の向上に際してはその熱残留応力を明らかにする必要があり,X線応力測定法はそのための有力な実験解析手法として期待されている。X線応力測定法を繊維強化金属基複合材料に通用する場合,特性X線の侵入深さ及び繊維の太さと分布状態に関係して3軸解析しなければならない場合が多く,そのためには無ひずみ状態の格子面間隔d_0を知る必要がある。一方,析出強化型合金を母材とする複合材料では,合金母材の格子面間隔は複合材料の熱履歴によって大きく変化することが予想されるため,複合材料中での合金母材のd_0を求めるには細心の注意を払う必要がある。 本研究では,高度な技術を要するが測定精度の高い集中ビーム法を採用し,SiC_<CVD>繊維強化6061Al合金(直径140μmの繊維が周期分布)及びγ-Al_2O_3繊維強化Al-5%Cu合金(平均直径17μmの繊維が不規則分布)の2種類の先端FRMき供試材とし,複合材料から採取された粉末試料を用いてd_0を求め,合金母材におけるd_0の妥当性について検討し,複合材料き600Kで焼なました場合および続いて77Kまで冷却した場合について母材の熱残留応力のX線3軸解析を行った。その結果,母材のd_0の値が不明であっても残留応力の主応力比が既知であれば無ひずみ状態に対応するsin^2ψの値を知ることができ,複合材料で測定されるd_ψ対sin^2ψの関係からd_0を知ることが可能であり,複合材料の熱残留応力測定におけるX線3軸応力解析の手法が拡張された。 本手法1はα-Al_2O_3臓維強化Al-2%Li合金(平均直径2(20μmの繊維が不規則分布)の母材と繊維の各相に通用中であり,今後は複合材料の熱残留応力とその熱的寸法安定性について展開する予定である。
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