研究概要 |
繊維強化アルミニウム系複合材料を代表して,太径長繊維を用いた複合材料としてSiC繊維強化6061Alを,細径長繊維を用いた複合材料としてα-アルミナ長繊維強化Al-1%Li,γ-アルミナ長繊維強化純AlおよびAl-5%Cuの各先端複合材料を供試材とし,これら複合材料に種々の熱履歴を与えて複合材料の室温における熱残留応力状態をX線3軸応力解析すると共に複合材料の室温近くでの加熱・冷却過程における熱残留応力変化をX線その場測定することによって繊維強化アルミニウム系複合材料の熱的寸法安定性と残留応力との関係を検討した.上記4種の複合材料におけるX線3軸応力解析によって6個の応力成分すべてが分離できた.太い繊維の複合材料では平面応力状態に近い応力がX線的に測定される.測定した総ての複合材料において繊維方向の熱残留応力は絶対値最大の主応力である.熱残留応力は複合材料の熱履歴および母材材質に依存し,繊維と母材間で応力の釣合条件を満たすように変化する.複合材料の熱膨張は繊維の熱膨張に熱応力に対応する繊維の弾性ひずみを加算した形式で記述できた.母材が純Alの複合材料における室温から600Kまでの繊維方向の熱膨張・収縮曲線はヒステリシスを示し,そのヒステリシス曲線はX線その場測定による熱応力からの予測曲線とよく一致する.続く800Kまでの熱サイクルにおいて,複合材料を約500K以上の一定温度に保持すると熱応力が緩和し,複合材料は熱応力の符号に依存して収縮あるいは伸長する.その挙動は純Alの高温定常クリープ速度式の形で定量的に記述できた.母材がAl-5%Cuの複合材料では,熱サイクル過程における母材の変形挙動は母材が純Alの場合に比べて複雑である.
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