本研究は、超高密度メモリーディスクを可能にするために、数十ナノメーターで高アスペクト比(加工幅に対する深さの比)のピットを高スループット(1時間当たりの基板処理枚数)で形成することを目的としている。我々は、走査トンネル顕微鏡(STM)の探針を高分子樹脂に押しつけ、数十nm領域に塑性変形を起し、反応性プラズマで塑性変形部の異方性エッチングを行い、それを基に金型を作り、押し印リソグラフィーで数十ナノの微細加工を高速で行う手法を提案した。そして、期間内に(1)レジスト塑性変形部の異方性エッチングの可能性、(2)数十nmピットの金型作製の可能性、を明らかにすることである。 その結果、STMによる電界蒸発法で径20nm以下で、深さ10nm以上のピットを加工することができた。また、AFM(原子間力顕微鏡)とSTMの押し印加工法で、径70nm以下で、深さ50nm以上のピットが得られた。これらのピットを酸素ガスの反応性プラズマエッチング法でアスペクト比1以上にすることができた。その後これらのピットを鋳型として、無電界めっき法で金型を作製したが、径が1.5倍以上に大きくなることを見出した。これはめっき液が樹脂を侵食したためと考えられる。そこで今後、微細無電界めっき金型形成に適したレジスト樹脂材料を見出す必要がある。または、数十ナノの金型作成法を新しく考案することも必要である。以上本研究を通じて、押し印リソグラフィーの可能性を明らかにすることができた。
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