研究概要 |
平成11年度の研究実績は以下とおりである。 円筒プランジ研削加工をインプロセス自動定寸装置で制御しても,寸法誤差が許容範囲を越える事態が往々にして発生することは周知の事実である.著者らの一連の研究からは工作物の熱変形挙動が,この寸法誤差の主要因の一つであると考えられる.例えば,寸法誤差がゼロとなる仕上げ寸法位置で,自動定寸装置のゼロ点信号を発信して砥石台を急速後退させても,研削加工中に工作物に蓄積された研削熱による熱変形量が砥石後退後に収縮し,その収縮量がそのまま寸法誤差となる.したがって,円筒プランジ研削の寸法精度を飛躍的に向上させるためには,研削サイクルにおける熱変形量を定量的かつリアルタイムに把握することが不可欠と考えられる.以上の観点から,本研究では工作物の熱変形量インプロセス予測システムを開発し,寸法誤差をゼロあるいは極小にすることが可能な寸法誤差ゼロ研削法を提案した.得られた主な結論は以下のとおりである. (1) 工作物の両端に取り付けた側板の熱変形量dqpをインプロセス計測・演算して,工作物熱変形量・dqwを定量的に予測する熱変形量インプロセス予測システムを開発した.(2)急速バック法による熱変形量の測定データに比較して,熱変形量インプロセス予測システムによるデータ振幅は1/3に縮小されており,データ精度は格段に向上している.(3)加工条件のプランジ速度Vpと速度比Kvが変化しても,熱変形量比dqp/dqwが一定値であることから,熱変形量インプロセス予測システムは1研削サイクル中の工作物熱変形量dqwを側板熱変形量dqpから定量的に精度よく予測できる有効な測走法である.(4)熱変形量インプロセス予測システムを適用して,工作物熱変形量の予測値dqwを演算しながら,実寸法生成量Rrをリアルタイムに検出できる寸法誤差ゼロ研削法を提案した.
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