研究概要 |
本研究では,アルミニウム複合材料の加工の中でも特に厳しいとされる,多段角筒深絞り加工に高周波振動付加法を適用することにより,アルミニウム重量比が85%を越える変形能の低い素材の成形性を飛躍的に向上させ,これら素材をリサイクル材料として積極的に利用できる,高性能加工システムの開発を目的としている.具体的製品としては,近年需要が急激に増加している携帯電話用電池ケースの生産システムをターゲットにしている.昨年までの研究で,潤滑剤,工具および素材形状,加工スケジュールなど各種工程パラメータを最適化することにより,振動なしの場合に加工段数を最高4段にまで減少させることができたが,製品板厚の不均一や側壁部におけるしわの発生といった問題が残った.本年度はまずこれら形状不良の問題を解決するために,2段以降の加工においてダイスとパンチの間のクリアランスを小さくし,絞りしごき加工を行えるようにした.その結果,製品短辺部および角部における製品板厚の均一化には成功したが,長辺部に関しては依然改良の余地を残した.また昨年試作したアクチュエータを組み込んだ装置により振動付加角筒絞り加工を行った場合は加工性能は逆に悪化した.そこで本年度は,加工最終段において振動付加方式を超音波振動に変えた新しい装置を試作開発し,それにより加工性実験を行い,ダイス形状等の加工条件を最適化した.その結果,耐焼付き性を高めるための対策を施していなかったのでダイス角部に溶着が発生するという問題はあるが,加工荷重が50%程度減少し,より厳しい条件(例えば加工段数を3段あるいは2段に減少させることができる)での加工可能性を示唆する実験結果が得られた.
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