研究概要 |
本研究では,アルミニウム複合材料の加工の中でも特に厳しいとされる,多段角筒多段深絞り加工に高周波振動付加法を適用することにより,アルミニウム重量比が85%を越える変形能の低い素材の成形性を飛躍的に向上させ,これら素材をリサイクル材料として積極的に利用できる,高性能加工システムの開発を目的としている.具体的製品としては,近年需要が急激に増加している携帯電話用電池ケースの生産システムをターゲットにしており,これまでの研究で素材や工具形状を最適化することにより,最高4段で目標とする製品を加工できるようになった. しかし,ダイス下部に圧電アクチュエータを組み込み,ダイスを軸方向に比較的低い周波数(1〜100Hz)で振動させながら角筒深絞りを行う装置で加工を行った場合には,加工性能は逆に悪化した.また,加振方式を超音波振動(振動数20kHz)に変え,同様にダイスを軸方向に振動させた場合には,加工荷重は50%程度減少したものの,加工初期にダイス角部に激しい焼付きが発生し,これを回避するための対策を種々施したが,問題を解決することはできなかった.そこで,本年度は特にダイスの振動方向を半径方向に変えることを試みた.すなわち,ダイスを角筒の短辺部中央にあたる位置で2分割し,一方を固定し他方を圧電アクチュエータにより半径方向に加振できるよう装置を改造した.これを用いて様々な振動数(50Hz,100Hz,150Hz,200Hz)および振幅(電圧0.5〜2.5V)で加工性実験を行った結果,電圧を2.0V以上にした場合には加工荷重が20%以上減少すること,短辺部の肉厚が均一になり加工精度が向上することなどが分かったが,加工性の著しい向上は今のところ認められていない.
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