| 研究概要 |
切削仕上面の生成過程を複雑系における現象と考え,超精密切削加工面の粗さ解析を行った.今年度は,解析に必要な粗さ断面データを得る実験を行うとともに,信号解析の一つであるウェーブレット変換を用いて粗さ解析を行い,ウェーブレット成分波形からカオス特徴の抽出を試みた.その結果,以下のような知見が得られた.
1. ウェーブレット係数はウェーブレット成分の平均値と局所的な範囲での変化率を抽出したものであり,この係数がゼロを基準に分布していることに注目して,係数平均値が断面曲線の成分波形の特徴を表すパラメータとして用いることができることを示した.
2. ウェーブレット係数平均値とその分散を用いて,断面曲線のモデル化手法を提案した.まず,ウェーブレット係数の分散と同じ値をとる一様分布乱数を発生させる.次に,発生させた乱数に各レベルのウェーブレット係数平均値を加え,対応するレベルのウェーブレット係数とする.そして,各ウェーブレット係数に対しウェーブレット逆変換して,成分波形を作成する.最後に,作成したウェーブレット成分を足しあわし,波形を合成する.以上の手順による仕上面粗さのモデル化手法が有効であることを示した.
3. 断面曲線をウェーブレット逆変換して得られたウェーブレット成分のアトラクタを求めた結果,レベル-3の以上のレベルでは,3次元相空間を埋め尽くすような軌道となり,ノイズに近い状態となった.また,レベル-4〜-6のアトラクタはドーナツ型の軌道を描いており,カオス特徴の一つであるストレンジ・アトラクタの様相を示した.また,リアプノフスペクトラムを求めた結果,ほとんどのレベルでゼロ以上となり,カオス特徴を示した.これらのことから,超精密切削加工面の断面曲線は,カオス的ふるまいを示す変動成分とランダムな変動成分,周期的な変動成分から成ることが明らかとなった.
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