研究概要 |
1. 大きな負のすくい角の接触面積拘束工具を対象として,変形領域を3本,5本あるいは7本の速度不連続線で近似した切削模型を開発した.エネルギー解法による第2すくい面への切りくずの進入角と切削抵抗の計算結果は実測結果と良好な一致をみた.第2すくい面と切りくずが接触するチャンファの状態での切削抵抗についても,第1すくい面と第2すくい面が受け持つ切削抵抗の分担比率を評価することによって,計算結果と実測結果とは良好な一致を示すことが確認された. 2. 上記の切削模型は,すくい角やすくい面摩擦の変化による切りくず生成状態の変化を説明でき,付随切りくずの生成・消滅からばりの生成への遷移過程を表現できるものとなっている.チャンファ部のすくい角が-30゚付近を境にして付随切りくずの生成からばりの生成が顕著となる切削状態に移行する.これらの切削模型に基づいて得られた諸データを用い,有限要素法によって切削温度を計算するプログラムを作成した.炭素鋼S48Cに関する計算によれば,低切削速度域で発生する構成刃先は,その平均温度が従来から報告されているように約500℃となる切削速度に達すると,付随切りくずとなって切削幅方向に押し出されるようになる.また高切削速度域ですくい面の温度が約1000℃に達しても,付随切りくずは消滅せず存在し続ける.従ってその消滅には切削温度ではなく力学的条件が関与していると考えられる. 3. 炭素鋼S48C,ステンレス鋼SUS304を被削材として,切れ刃傾斜角,チャンファの長さや角度を変化させ,切削抵抗,切りくず生成状態,すくい面の摩擦状態等を実験的に検討した.この結果切れ刃傾斜角とチャンファの長さの増大とともに,付随切りくずの生成量は少なくなることが分かった.
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