研究概要 |
1.大きな負のすくい角の接触面積拘束工具による切削、および第1すくい面が切削厚さより小なるチャンファの状態となる切削を対象として、その変形領域を速度不連続線で近似した切削模型を開発し、エネルギー解法の適用によって、切削抵抗と切りくず生成状態の予測を試みた計算結果は実測結果と良好な一致を示した。 2.上記の切削模型は、すくい角やすくい面摩擦の変化による切りくず生成状態の変化を説明でき、付随切りくずの生成・消滅からバリの生成への遷移過程を表現できる。これらの切削模型に基づく諸データを用い、有限要素法による切削温度計算を行った。炭素綱S48Cに関しては、高切削速度域ですくい面の温度が約1000℃に達しても、付随切りくずは存在し続け、その消滅には切削温度ではなく力学的条件が関与していると考えられる。 3.チャンファの状態で、第2すくい面と切りくずの接触長さを人為的に拘束するためのランド部を設け、すくい面が3面からなる工具の切削模型を開発し、付随切りくず生成の有無を検討した。その結果、チャンファ部での付随切りくずの生成は、第1,第2すくい角の組合せとチャンファ部の摩擦応力の大きさによって影響を受けることが分かった。また第2すくい面ランド部の摩擦応力は、同一のすくい角をもつ接触面積拘束工具による実験結果に基づいて評価し、このデータを適用して得た切削抵抗の計算結果と実測結果とは良好な一致をみた 4.炭素綱S48Cを被削剤として、すくい面形状が工具摩擦の進展および刃先の欠損に及ぼす影響を検討した。チャンファが大きくなるに従い耐欠損性は向上するが、逃げ面摩耗に関しては必ずしも良好とはいえず、摩擦の進展が早まる結果となった。また付随切りくずが生成される速度域での仕上げ面粗さはかなり良好であるが、第1すくい面が極端に負になると仕上げ面はバニシされ、バリが大きく生じることが確認された。
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