切削にともなって発生する音響(切削音)に着目して、比較的遠方から、非接触で切削工具の損傷を個別に検出監視する方法の研究である。工場などの実際的環境でこれを実現しようとすると、目的の音と周辺音(特に隣接の工作機械からの音)の区別が重要である。このため本年度は以下の研究を行なった。 1. まず、切削加工の需要の多い炭素鋼S35Cの旋盤加工について、種々の切削条件で切削実験を行い工具損傷の変化とその時発生する切削音との関係を調べた。さらに音響分析装置を用いて、切削音の放射特性(レベル、周波数、放射方向)を検討した。その結果、切削音の周波数範囲としては、概略4〜8kHzを考慮すればよいことが判明した。 2. マイクロフォンセンサアレイとして、多数のエレクトレットコンデンサーマイクロフォンを水平面内に一定の間隔で配置し、その指向性と弁別能力を検討した。その結果、この配置方法では素子数を少なくとも7エレメント以上にすることが望ましいことが分かった。さらに、重み関数を工夫することによって、特性の改善を図って行く。 3. 上記のセンサアレイを機械的に回転することによって切削音の音源を標定することができる。しかし機械的には静止していても、各エレメントからの信号に適当な遅延関数(位相)を与えると、等価的な回転効果が発生するので音源の標定が可能である。このために必要な条件を検討している。
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