切削に伴って発生する音響(切削音〉に着目して、比較的遠方から、非接触で切削工具の損傷状況を個別に検出監視する方法の研究である。工場などの実際的環境でこれを実現しようとするときは、目的の音と周辺音(特に隣接する工作機械からの音)との区別が重要である。このため、前年度は主として、音の指向性に力点をおいて研究したが、引き続き本年度は下記の研究を行った。 1.これまでの切削実験の結果を詳細に検討した結果、工具の損傷が進むと切削音の振幅が増大するだけではなく、切削音のピーク周波数がわずか低下することが確認された。また、周波数低下とともに高次高調波の発生が認められる。したがって、2次3次の高調波の発生を検出することによって工具損傷を監視することが可能であることが分かった。なおピーク周波数の低下は歪率の増加と密接な関係にある。 2.前年度の研究成果〈主に炭素鋼の旋削が対象、切削工具固定)が、フライス切削(切削工具回転)の場合にも適用可能であるかどうか切削実験に基づき検討した。その結果、フライス切削では発音体である切削工具が回転しているため、ドップラー効果の影響を受けること、並びに複数の工具の振動を分離して分析する必要があり、そのためには回転に同期した時分割処理が適当であることなどが分かった。
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