研究概要 |
切削に伴って発生する音響(切削音)に着目して,比較的遠方から,非接触で切削工具の損傷を個別に検出監視する方法の研究である. 切削加工の需要の多い炭素鋼S35Cの旋盤加工について,種々の切削条件で旋削実験を行い工具損傷の変化とその時発生する切削音との関係を調べた.さらに音響分析装置を用いて,切削音の放射特性(レベル,周波数,放射方向)を検討した.その結果,切削音の周波数範囲としては概略4〜8kHzを考慮すればよいことが判明した. 工具の損傷が進むと切削音の振幅が増大するだけではなく,切削音のピーク周波数がわずかに低下することが確認された.また,周波数低下とともに高次高調波の発生が認められる.したがって,2次3次の高調波の発生を検出することによって工具損傷を監視することが可能であることがわかった.さらに周波数低下の発生原因について研究を進め,高調波歪みが原因であることを明らかにした. 切削音の発生原因についても検討した.旋盤加工において,切削時の工具の振動方向と工具周りの切削音振幅の分布を調べた結果,切削音の発生原因は工具摩耗の進行に伴い生じる摩擦形びびり振動によることが判明した. フライス切削においても工具損傷の変化とそのとき発生する切削音との関係を調べた.この結果,工具損傷が進むと切削音の振幅が増大するだけでなく,切削音のピーク周波数が低下することが確認された.
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