研究概要 |
(1)研究の背景と目的 近年の医療の高度化に伴い,医用工具の重要性が高まっている.医用工具の多くは複雑でその製作には熟練と相当の時間を要し,概して高価である.本研究はこうした問題を克服することをねらいとする. (2)研究成果 上記の対策として新たな成形システムの開発を行った.システムは,鍛圧加工ステージと切削加工ステージ及び回転金型ステージ,及びこれらと座標系を共通化した材料支持ステージからなる.材料支持ステージ上の材料が各加工ステージで加工される.本システムは座標系が共通であり,高い加工精度が容易に得られる特徴を持つ.鍛圧加工ステージは打抜き,穴あけ,切り欠き等のせん断,及び圧縮鍛造加工が可能で大きな成形を短時間で成し遂げることができる.回転金型ステージでは単純形状工具の回転機能により複雑形状製品をせん断創成できる.切削は型成形が苦手な自由形状を主にエンドミルで加工する.ここでは医用微細鉗子を加工例として取り上げその有効性を検討し,微細製品の加工に効果的であることが確認された. しかし,複雑な製品に対してはさらなる検討の必要性が指摘され,そこで微細切削システムが付け加えられた.複雑形状部分の創成はエンドミルが一般的であるが,工具製作の観点から寸法に限界がある.そこで細い丸棒を斜めにカットした「はすかい工具」を開発し目的に供した.工具寸法は15-25μmであり,空気軸受機構を用い50,000-100,000rpmで駆動された.そして工具寸法にほぼ等しい幅の微細溝の創成加工に成功した. このほか,加工時に生じるバリ対策として,磁気研磨法が検討され,新たなメディアとしてグリッドを用いる方法が提案された.そしてその有効性が実験的に確認された.
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