研究概要 |
機械要素のマイクロ化と超精密化の進展に伴い,マイクロトライポロジーの観点から重要性の増す超精密・微細加工面の設計指針を得るために,本年度は以下の研究を実施した. (1) A1合金磁気ディスク基板のダイヤモンド切削における残留応力と変形に関する研究 ダイヤモンド切削によってディスク基板には圧縮の表面残留応力が発生するが,A1合金基板の結晶異方性のため,残留応力値は基板の円周方向で変化することが明らかになった.また当補助金を得て購入したレーザー干渉計を用いて,ディスク基板の形状精度(円周方向の真直度)を測定したところ,残留応力値の変化率が大きいディスク基板ほど,円周方向の真直度が悪くなるのが認められた.このことより,残留応力値の円周方向分布はディスク基板を変形させることが明らかになった.さらに,ディスク基板の変形を抑制するには,切削パラメータの中で送りを小さくすればよいことが明らかになった. (2) 異方性エッチングにより生成されるSi{100}面の粗さのフラクタル解析・ サブミクロンデバイスで大問題となる摩擦摩耗に影響する表面の幾何学的性質について詳細な解析を行った.その結果,Siの微細加工で多用されるKOHによる異方性エッチングは自己アフィンな表面を形成し,その表面のフラクタル次元(表面の性質を本質的に評価するパラメータ)と粗さは,エッチング時間と温度に影響されることが明らかになった.この特性はエッチャント中に拡散するOH基とSiの確率的衝突による錯イオンSiO_2(OH)_2^<2->の溶解という確率過程に依存するものであることがイーデンモデルを用いたシミュレーションでも確認された.
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