研究概要 |
研削加工を行うことによって金型の自由曲面を高精度であると同時に平滑に仕上げるためには,耐摩耗性に優れた極微粒の研削工具を用いる必要がある.既存の研削工具の中では、工具台金の表面に析出するニッケルの結晶粒で砥粒を固定化した,電着工具が最も耐摩耗性に優れている. しかし工具の形状精度や切れ味を優先させるために、既存の電着工具では台金の表面に砥粒は単層しか電着されていない.したがって工具寿命が短いという問題点を抱えている.またメッシュサイズが#3000以上の極微粒ダイヤモンド砥粒を用いるとめっき液の中で砥粒が二次凝集し,均一に砥粒が分散した電着工具を作ることが困難になる. 工具寿命が短いという問題点は砥粒を厚地めっきした,電鋳工具を用いることによって解決することができる.しかし沈降共析法を用いた従来の電鋳工具の製造では,(高速かく拌→砥粒沈降→電着→埋め込み)といった一連の工程を繰り返して行うために,工具の製造には膨大な時間を要している. 既存の電着あるいは電鋳工具が抱えているこれらの問題点を克服するために,本研究では金属酸化皮膜で被覆された極微粒ダイヤモンド砥粒を用いた,高速電鋳工具製造法の開発を行った.砥粒の二次凝集を防止するために,極微粒ダイヤモンド砥粒表面に金属酸化皮膜を高周波スパッタし,砥粒表面の等電点を変えることを試みた.また台金の表面に沈殿した砥粒を連続して低速かく拌することによって陰極電流密度を上げ,電鋳工具の製造に要する時間を大幅に短縮化することを試みた. 本研究で得られた研究の成果は以下のように整理される, 1)従来の沈降共析法を用いた場合は陰極電流密度を最高でも0.5A/dm^2て程度にしか上げることができないために,厚さが1mmの電鋳工具を製造する場合には最低でも81時間を要する.これに対し,連続低速かく拌法では陰極電流密度16A/dm^2程度にまで上げることが可能であり,厚さが1mmの工具の製造に要する時間を2.5時間に減らすことができた. 2)市販の合成ダイヤモンド砥粒を用いた場合,めっき液のpHが4.7であるのに対して砥粒表面の等電点が3〜4とほぼ等しいために,ダイヤモンド砥粒はめっき液の中で凝集して沈降する.これに対してダイヤモンド砥粒の表面に金属酸化皮膜を高周波スパッタし砥粒表面の等電点をめっき液のpHから±2程度離した場合には砥粒の二次凝集を避けることが可能であり,工具の砥粒密度を上げることができる.
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