研究概要 |
自律分散型生産システムを工作機械群,搬送機械群,自動倉庫,管理機械等のマルチエージェント構成とみなしたモデル化を行う上で,搬送機械群の一つである無人自動搬送車(AGV)はその空間的自由度の大きさと離散的な生産システムを構築する能力に於いて重要な位置を占める.従って,AGVの自律運転を可能とする方法論の開発が強く望まれている.AGVの自律運転を可能とするには,二つの問題,すなわち(1)経路獲得問題と(2)通信プロトコルの獲得問題,が存在し前者に対しては多くの研究があるが,後者に対してはその実施例が少ない.これらを踏まえ,今年度は機械学習を採用した多数AGVの通信プロトコルを獲得する方法論の開発と数値計算実験による提案方法の検証を実施した.実施方法は,複数AGVを学習オートマトンにより定式化し,学習方法にはQ-学習を採用する.Q-学習のための状態記述には注目するAGVのセンサー範囲内に感知されたAGVの速度及び方向と自身の速度及び方向をもちい,また,行動記述には前進,右旋回,左旋回を採用する.数値実験とし100x100の仮想工場を想定し,そこに3台の工作機械を直線上に設置して,フィールド内に100台のAGVを発生し,工作機械への被加工物の搬送を衝突が頻繁に起こる条件で実施した.実験から得られた結果は,感知されたAGVが同方向の場合は同速度でそのまま走行を行い,違方向の場合は右あるいは左旋回のどちらかの一方の行動が行われる通信プロトコルが獲得されることがわかった.得られた結果をもちいて,被加工物搬送の平均仕事完了時間を評価として貝原およびヒューリステックな方法との比較実験を行った.その結果,わづかではあるが学習によって獲得された通信プロトコルが良い結果を得ることが判明した.
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