研究概要 |
自律分散型生産システムを工作機械群,搬送機械群,自動倉庫,管理機械等のマルチエージェント・システムとしてモデル化する上で,搬送機械群の一つであるAGV(無人自動搬送車)はその空間的移動の自由度から重要な位置を占めている.平成10〜11年度は,(1)AGVの学習に基づく自律搬送経路の獲得,(2)AGVの学習に基づく相互間の通信プロトコルの獲得,(3)簡易疎分布メモリーを用いた下界認識,の研究を実施し,AGVが加工品あるいは半製品のもつ情報によって目的地への経路及び目的地への搬送を自律的に実施可能であることを示した.これらの機械学習には一貫してQ学習を採用した. 平成12年度は,(1)AGV間の学習に基づく協調搬送行動の獲得,及び(2)AGV間の衝突行動の獲得による衝突回避行動の学習に基づく獲得,の研究を実施した.前者の研究は,複数のAGVが搬送物の物理的な抗力のみで協調行動をQ学習によって獲得することを目的として実施し,数値計算シミュレーションから複雑な微分方程式をたてることなく,単純な試行錯誤学習から協調行動搬送が得られることを検証した. 後者の研究は,複数のAGVが工場内で搬送を実施している時に,衝突可能性のある行動領域に他のAGVが入ってきたとき,その行動を予測し,衝突を回避できる知識の獲得を目的とした.本研究の特色は,予想される相手AGVの衝突軌跡を予測する行動を獲得させた点にあり,衝突行動の数値計算シミュレーションでは,確実に衝突を引き起こす行動を獲得できることが検証された.衝突回避には得られた知識と正反対の行動をおこなえばよい.これらの問題にはQ学習を採用したが,ANN(人工ニューラルネットワーク)の学習と異なって追加学習が可能であることも新しい知見として検証された. 本研究は,自律分散型生産システム全体のエージェント協調行動を目的としているが,複数エージェントの群行動の知識獲得法がAGVに限定された.しかしながら,3年間を通して実施した研究は,マルチエージェント・システムとしての生産システム構築を可能とする予見を与えるものであった.
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