研究概要 |
歯車などの複雑形状品を精度良く冷間鍛造できれば経済的効果は大きい.提案した分流鍛造技術と開発した複動ダイセットを活用すれば短時間に鋼製の外歯あるいは内歯のネットシェイプ鍛造が低い加工面圧で実現できることを明らかにしている.本研究はこれまでの知識を基盤としてさらに形状の複雑な歯形部品,すなわち,製品内・外周部に歯形を共有する部品の精密鍛造の実現の可能性を検討するものである.本年度は加工装置・計測システムとして分割歯形パンチが円滑に動作できるダイセットを自作し,モデル材として工業用純アルミニウムを用いて,パンチ複動作動の効果を検討してみた.その結果をまとめるとつぎのようになる.(1)加工装置・計測システムは支障なく動作し,共有歯形部品の精密鍛造に関する一連の検討が可能である.(2)従来の単純な密閉鍛造では加工力をいくら増しても形状の良好な共有歯車を成形することはできない.(3)分割歯形パンチを採用し,段差加圧・空隙設定・平坦加圧を順次段階的に内歯側と外歯側に行えば,形状の良好な内歯・外歯共有歯車を加工力を高めずに得ることができる.なお,これら一連の作業は分割歯形パンチの作動が自動化できれば短時間に実施できる.(4)素材形状として内径側の上・下角隅部に適切な面取りも併せて施せば形状の一層良好な共有歯車が加工力を高めずに得ることができる.なお,本研究成果は第49回塑性加工連合講演会にて発表されている.また,内歯・外歯共有歯車の加工に必要な加工面圧の理論予測として上界有限要素法を活用した展開を始め出しているが,加工開始時においても内歯側と外歯側への分流で材料充てんが進行するため,形状が複雑になっても充てんに必要な加工面圧は内歯単独あるいは外歯単独の製品の加工の場合と比較してあまり高まらないことが予測される.今後は分割歯形パンチ複動作動方式における最適素材形状の検討並びに新たな発想として突起付き歯形パンチを活用することの効果を検討していく.
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