研究概要 |
本研究の目的は,性質の異なる複数の材料が空間的に組み合わさり,センサ機能,アクチュエー夕機能などの機能を有する構造物を,3次元CADの形状データから自動的・短時間に一体成形する,機能性ラピッド・プロトタイピングの基礎技術を確立することである。 本年度の研究成果は,次のとおりである。 (1) 積層造形装置を設計する際の基礎データを得るため,造形の解像度を決定するノズル穴径およびノズルからの押し出し量の制御に関する実験を行ない,定量的な検討を行なった。その結果,高精度な造形を行なうためには,押し出すピストンの位置の制御だけでなく,シリンダ内の圧力測定結果をフィードバックすることが必要であることがわかった。 (2) 微小なノズル穴からの材料押し出し量を精密に制御するため,直径がわずかに異なる2つのピストンの押し引きを組み合わせる,差動方式に基づく材料押し出し装置を設計,実装した。また,材料毎にシリンダを用意し,それを切り替えることにより,造形中に材料を選択する機構を設計,実装した。 (3) 性質の異なる複数の材料として,ポリプロピレン(メルトインデックス45[g/10min]),熱可塑性エラストマ(同55[g/l0min]),導電性樹脂(同3.5[g/10min])を,230℃に加熱溶融して押出し実験を行なった。なお,メルトインデックスとは,樹脂の流れやすさ(押出しやすさ)を表わす一つの指標であり,成形温度まで加熱した樹脂をある一定の強さで押し続けたときに,単位時間当りに押出される樹脂の量を表わす。実験の結果,基本的には所望の1層の断面形状の造形が行なえること,安定した積層を行なうためには,精度の向上が必要であることが明らかとなった。
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