研究概要 |
マイクロマシニング技術を利用して、シリコン基板上に大変形弾性ヒンジによるマイクロ三次元高集積マイクロ運動変換機構を実現するために、三次元運動変換機構の基本となる2自由度5節PRRRPの基本機構とその製作プロセスを提案した。大たわみ曲げ理論を用いて提案した機構の設計指針を示し、マイクロモデルにより機構の入出力変位計測から設計指針の妥当性を確認した。また加振実験から、提案した機構は約100MHzまでは共振を生じない比較的剛性の高い機構であることを明らかにした。 次に、マイクロマシニングによる基本機構とアクチュエータの一体成形と、運動変換機構全体の更なる微小化を実現するために、機構ならびにアクチュエータの構造材料として弾性率が小さく弾性限界ひずみの大きいポリイミドの利用を提案した。また、金属膜をポリイミド構造に蒸着した静電アクチュエータの提案をした。ポリイミドの機械的物性値と設計指針をもとに基本機構とアクチュエータの仕様を決定した(基本機構の出力変位:水平方向±10μm、垂直方向0〜20μm、アクチュエータ:出力変位16.6μm,出力47.7μN)。仕様に従い製作を行った結果、ポリイミドが10μmの厚みの場合には、RIEによる垂直エッチングの加工精度は約10μmであることが確認された。また、問題点として硬化収縮と成形時の残留ひずみが原因で構造の形状が歪むことが確認され、垂直方向の最大たわみ量が18μmであった。試作した静電アクチュエータに直流電圧を印加し駆動実験を行い、80Vで16μmの変位を確認した。構造の歪みの問題を解決するため、LIGAプロセスによる櫛歯形アクチュエータを試作した結果、歪みのない構造を得ることができた。今後はLIGAプロセスにより三次元運動変換機構を試作することを予定している。
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