本年度は本研究課題の最終年度にあたる。昨年までの研究で振動摩擦のメカニズムが理論的にも実験的にも明らかになり、振動による摩擦低減の周波数特性には接触部の凝着特性だけでなく変形特性も含まれており、この周波数特性を計測することにより触覚に関するマルチセンシングが可能になることを示した。 また、現にこの周波数特性に二重Kohonen-ネットワークフィルターを利用することにより各種材料の分類が出来ることも明らかにしてきた。今年度はこれをさらに進展させ、布地の特性評価といった微妙な風合い評価にまで適用できる可能性があることを実験的に示した。また、理論展開を進めることにより、振動を伴うヘルツ接触には多種類の非線形問題が含まれ、カオスの発生はもとより、確率共振現象の存在する可能性まで明らかになった。カオスの発生は摩擦の大幅な低減を招き、振動摩擦による触覚センサの感度向上に繋がることが明らかになった。また、本研究のターゲットである、触覚センシングとは直接的にはつながらないかもしれないが、極微小な振動をしている表面に、ランダムな振動体を押し付けた場合に、両者の振動が非線形接触を通じて大幅に増幅される現象が起こることを見出した。これを利用すると、超高感度な振動計が開発できる可能性がある。すなわち、本研究は今後このような複雑系への進展も考えられることが本年度の研究から明らかになった。
|