研究概要 |
先進摺動材料として期待されているアルミニウム合金基複合材料の摩擦・摩耗特性を系統的に調べることを目的にして、本年度ではまずAl合金-グラファイト複合材料(Al-GrC材)ピンと軸受鋼ディスクを用いて、接触荷重一定、空気中で相対湿度曲を変数として一方向すべり摩擦・摩耗試験を行った。試験中摩擦と摩耗の変化挙動を測定した。得られた主な結果は以下のようである。 (1) 荷重100Nでは摩擦係数μは低湿度で高く、RHの増加と共に低下し、RH=50〜60%の範囲で極小値を示し、高湿度で上昇する。荷重10Nではμの値はばらつくが、RHに対してあまり変化しない。 (2) 摩耗率wは乾燥空気中で極めて高く、RHの増加と共に低下してRH=40〜50%付近で極小値を示し、RH=70〜80%の高湿度で増大する。 (3) 摩擦・摩耗が極小値を示す中湿度レベルの範囲において、ディスク摺動面にAl摩耗粉とgraphite粉の混合した帯状付着膜が形成し、金属接触による凝着を緩和して、摩擦・摩耗が低下する。 ついで、軽量化自動車エンジン摺動部材料として期待されるアルミナ短繊維強化Al合金基複合材料(AFRMMC材、ビン)と相手材料(Al合金AC8A材及びA2017材、ディスク)の組合わせによる潤滑油中摩擦・摩耗特性を調べた。マシン油及びエンジン基油中の一方向すべり摩擦・摩耗試験を行い、μ及びwを測定した。AFRMMC材の潤滑油中摩擦・摩耗特性について以下の結果を得た。 24時間連続摩耗試験(全すべり距離13,000m)においては、 (1) 両潤滑油中とも,AFRMMC材はいずれの試験条件でも全く摩耗を生じない。これはピンの摺動面に付着皮膜が形成されるためと考えられるが、その組成は現在不明である。 (2) 相手材には摩耗が生じるが、AC8A材はA2017材に比べて良好な耐摩耗性を示す。 (3) μは試験条件であまり変わらず、0.02-0.08の流体潤滑領域にある。 荷重漸増試験においては、 (4) 両潤滑油中ともAFRMMC材対A2017材ではある荷重レベルでμが急増し、境界潤滑領域へ遷移するが、ISFRMMC対AC8A材ではμが急増する荷重レベルは現れない。 (5) エンジン基油中の方がμは小さく、AFRMMC材対AC8A材では700Nの荷重まで流体潤滑領域にある。
|