直接解析が適用できない複雑乱流場の解析手段としてラージ・エディ・シミュレーション(LES)が挙げられるが、工学一般の問題へ適用するには未だ研究課題を残している。Germanoらの提案したダイナミックSGSモデルは基礎的研究では多くの課題に優れた結果を与え、LESにおける汎用的な乱流モデリングとして注目される。本研究では、乱流LESのより広範囲な応用を進めることを目的として、ダイナミックSGSモデルの考え方に基づいた複数乱流場のLESモデリングの実用的な定式化を示し、その数値計算上の問題点を明らかにするため以下の研究を行った。 a) G方程式に基づく予混合乱流モデルをダイナミックSGSモデルによって定式化し、剥離により保炎される燃焼器の乱流火炎予測への適用により有効性を検証した。 b) 固気流混相流の粒子による乱流変調を考慮したLES方程式をダイナミックSGSモデルに基づき改良し、チャンネル乱流に適用して適切なモデル定数評価が得るとともに、GS成分方程式の散逸効果が不十分である要因を考察した。 c) ダイナミックSGSモデルがbackscatterの評価に不十分であることを考慮して、局所瞬時の解を明示的に反映するSGSモデルを新たに提案した。チャンネル乱流などでの数値検証により、このSGSモデルが壁近傍渦構造を抽出しうることを示した。 d) ダイナミックSGSモデルを適用して外力効果を考慮したSGSモデルを構築し、回転場および浮力の働く基本的な流れ場に適用して数値検証した。 e) LESの正確な検証に適用できる高精度な解析法として、基礎式の保存性を考慮した一般座標系格子差分法および有限要素法を導入した解析コードを試作し有効性を実証した。 f) 実用的LESの数値計算上の課題である数値不安定性に対して、陽的空間フィルタや対流項スキームの導入により生じる影響について検証した。
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