安定性理論とDNSを用い、圧縮性壁面/自由せん断流の遷移機構を解明した。圧縮性Poiseuille流れと超音速境界層の遷移機構を詳細に調べた。今年度調査した超音速境界層は、前縁衝撃波を伴うマッハ数4.5までの断熱壁境界層である。超音速境界層においては、衝撃波獲得性能と高解像度をあわせもつ非線型高次精度コンパクトスキームを用いて上流からの音波撹乱が境界層内で不安定波として受容される過程を調べた。マッハ数4.5においては、非粘性の特性をもつsecond modeが形成されることが調べられた。受容されたsecond modeが線形理論で予測された中立安定曲線内側で増幅に転じることが確認された。亜音速Poiseuille流れについては、マッハ数が大きくなるに従い臨界レイノルズ数は小さくなりマッハ数0.7まででは2000から2500と非圧縮流れのそのおおよそ半分になることが明らかになった。一方、大きな振幅の乱れを導入した場合の代数型遷移過程が観察された。縦渦が観察され一対の渦構造として発展し、その間に低速・高速ストリーク構造が発達する様子が観察された。密度・温度分布が遷移機構に影響を及ぼしていることが明らかになった。ただし亜音速では、密度・温度の変化はそれほど大きくなく、撹乱振幅が遷移に大きな影響を及ぼし、非圧縮性流れのそれと同様な代数型遷移過程を示すことが明らかになった。最後に、マッハ数1.2初期レイノルズ数600の遷移後期過程の圧縮性後流について、臨界点理論であらわされる3つの不変量にたいする発展方程式の非一様項の統計的性質がDNSデータベースを使って調べられた。
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