研究概要 |
半導体産業,宇宙産業,リサイクル産業などにおいては,流動のマイクロメカニズムの解明と制御が問題となっている.本研究課題では,その流動現象の解明にあたり,最も有力な計測ツールとしてPIV(Particle Imaging Velocimetry,粒子画像流速測定法)の拡張と応用を進めている.平成10年度の研究成果の概要を以下に示す. 山本は既に開発に着手している新しいPIV計測手法である速度勾配テンソル法とデローニ三角分割相関法を,実用問題に対して適用し,その有志性を示した.具体的には,可視化情報学会において企画されているPIV標準化・実用化研究会の委員として,標準実験と定義される"容器内の水面の自励振動噴流"に対し,従来法の二値化画像相関法と新しい速度勾配テンソル法の速度ベクトル正捕獲率の比較を行った.この結果,後者が噴流部や回転部においてPIV性能の改善が見られることなどが実験的に確認された.またPIVの粒子選定,照明方法,撮影方法とあわせた一連のPIV性能の評価がなされ,平成10年11月に,PIVワークショップ-熱海'98において資料集提供と口頭発表が行われた. 太田は三次元PIV計測を目的とするホログラフィ撮影装置を非定常流動に応用し,気泡流中の気泡の三次元位置,三次元形状をComputer Graphicsで再構築することに成功した.またリキッドブリッジやループ型細管ヒートパイプなど,微小流路内の気液界面挙動に関する様々な可視化実験ならびに画像計測を行い,マイクロ流動環境における可視化手法の多面的検討を行った.さらに脈動自由噴流場中の乱流変動成分をPIV計測することにより,乱流統計量計測においてPIVがLDVと同程度の分解能を有することが確認された.以上の内容は混相流国際会議(ICMF'98-Lyon)や,日欧混相流会議(平成10年7月)において口頭講演発表なされた. 村井はPIV計測結果から流動の高波数成分を推定・復元するためのハイブリッドCFD-PIVツールを開発するための第1段階として,等方性乱流のN-S解を用いた新しいPTVの速度ベクトル補間法(LER-E)を提案し,国際光計測会議(VSJ-SPIE'98,平成10年12月)に口頭講演発表を行った.また,気泡流中の微視的な乱れ生成機構を明らかにするため,気泡流全体と個々の気泡の伴流の二つのスケールによるPIV計測を実行し,乱流スペクトルの獲得に成功した.なお,この結果は,平成11年4月の機械学会論文に掲載されることになった.
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