研究概要 |
環境汚染物質の除去装置,化学反応装置,微小重力環境装置,半導体デバイス,バイオテクノロジーなどの分野では,流動現象のマイクロメカニズムが機器の性能を左右する重要な問題となっている.本研究課題では,これをPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)により明らかにすることを目的として,PIVシステムの開発に専念してきた.本研究課題に対する3年間の研究成果は次の3つの項目に分けられる. 山本は,デローニ三角分割PTV法(DT-PTV),速度勾配テンソルPTV法(VGT),ならびにFuzzy Logic(FLPTV)を導入したPTV法のアルゴリズム開発を行った.DT-PTVでは従来型アルゴリズムの500倍程度の処理速度を実現し,VGTでは,回転・せん断などの変形自由度に対処した計測を実現し,いずれもExp.Fluidsに掲載された.Fuzzy Logicを併用した手法では,可視化画像からの粒子位置の認識と乱れ度の大きな流動に対して従来法よりも大幅に測定精度の向上が実現することを示した. 太田は,微小流路内の表面張力駆動流れ,自由噴流ならびに脈動噴流における局所的乱流構造に関するLDVとPIVの精度比較,ホログラフィによる微小空間流動の三次元PIV計測方法についてシステムを開発した.この中で,微小流路内では気液界面の存在が二次流れを誘発し,流動抵抗を増加させること,重ね合わせ法によるPIVによりLDVにひけをとらない流動計測精度を得ることを示した. 村井は,PIV手法の気泡流への応用と新しいPIVデータの後処理手法を開発した.これにより,気泡流中で微小な乱れが増幅する「逆エネルギーカスケード」現象,気泡プルームの三次元螺旋構造,物体周りの二相流の特異な伴流構造を定量的に解明することに成功した.これらの成果は,Exp.Fluidsを初めとする国際学術雑誌に発表され,内外から大きな反響があった. 以上,本課題の遂行によりこの技術を応用した新技術の創出,環境対策や安全性向上のための基盤が確立され,今後もさらに発展の期待できる成果を得た.
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