研究概要 |
本年度は新たに作成した測定部(滑面および砂粒粗面)におけるI型及びX型プローブによる測定をおこなった。滑面はベークライト製(全長2000mm)であり、これまで問題となっていた壁面での熱線(タングステン線)との干渉が緩和され、壁近傍での速度分布の計測データに信頼性が得られた。砂粒粗面に付いては、平均粗さk_8=1.71,0.6mmを作成した。流れ方向壁面静圧の分布を±0.5%以内に調整し、単位レイノルズ数U_0/ν=3.14,5.27,7.38,9.49,11.6,13.9×10^<-5>に設定し測定をおこなった。 申請者は壁乱流における普遍則として対数領域の存在を仮定し、PDF方程式から対数則を導くことを報告している。これは変動速度の確率密度関数型の相似性から導かれる結果である。実験で得られる速度データからPDFを計算し、対数領域の妥当性を理論解析に基づき確認した。実験データの解析ではPDFの形状を判断するために、情報幾何学で用いられるダイバージェンスを利用し、滑面乱流境界層について、6つのレイノルズ数について上述のことを確認した。これまでの定説では、対数領域の上限は境界層厚さの20パーセントとなっていたが、本解析法で導いた対数領域はレイノルズ数の関数となり、レイノルズ数が十分大きくなると従来の値に漸近することが明らかとなった。砂粒粗面に付いても、対数領域内でPDFは相似構造を有することがわかり、申請者の提案した方法は、壁乱流について一般に成立することを確認した。
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