研究概要 |
申請者は壁乱流における普遍則として対数領域の存在を仮定し、PDF方程式から半理論的に対数則を導くことを報告してきた。これは変動速度の確率密度関数型の相似性(不変仮説)から導かれる結果である。実験で計測された速度データからPDFを計算し、対数領域の妥当性を不変仮説に基づき確認した。実験データの解析ではPDFの形状を判断するために、情報幾何学で用いられるダイバージェンスを利用し、滑面乱流境界層について、6つのレイノルズ数(U_0/v=3.14,5.27,7.38,9.49,11.6,13.9×10^<-5>)について上述のことを確認した。これまでの定説では、対数領域の上限は境界層厚さの20パーセントとなっていたが、本解析法で導いた対数領域はレイノルズ数の関数となり、レイノルズ数が十分大きくなると従来の値に漸近することが明らかとなった。 砂粒粗面境界層に付いても、同種の実験及び解析をおこなった。従来から報告されている粗面における対数速度分布の存在範囲では、滑面におけるPDFの不変仮説は成立せず、速度場の不変速度分布は、乱れ構造を含めた普遍性を反映するものではない事が明らかになった。また、24chのI型プローブの同時測定をおこない、組織構造は対数則の関連について考察した。経験的固有直交展開に基づく解析から、組織構造は対数則の成立に必要な条件ではないが、必要条件であることを明らかにした。
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