研究概要 |
すきま比β=0.14の1渦モードを対象に,すきま内の流れに微小擾乱を与える実験を行い以下の結論を得た. 環状TG渦発生の臨界レイノルズ数Recについては,従来の研究では準静的な加速状態(dR^*dt≦10^<-0.7>)において始めて発生するレイノルズ数と定義しRec=900を得た.しかし,今回の実験では回転レイノルズ数ReがRe=900以下においてもある程度の時間経過とともに環状TG渦が発生することがわかった.そこで,860から900までの適切なReの流れにおいて回転数,温度を一定に保ちTG渦発生までの時間を測定した.環状TG渦が発生するReを初生レイノルズ数Re_F,発生までの時間を初生時間t_Fとする.その結果,Re_Fが小さいほどt_Fが大きくなるので,t_F→∞に対するRe_Fの極限値を,環状TG渦が発生する低位臨界レイノルズ数Rec_1と定義することにする.すきま比β=0.14の今回の実験ではRec_1=860を得た.微小擾乱を与えた場合には,初生時間t_Fが擾乱なしの場合に比べ大きくなるが,低位臨界レイノルズ数の値はRec_1=860となり変化がなかった. 層流ー乱流の遷移に関しては,微小擾乱を与えることによってスパイラルTG渦,進行波動の発生が擾乱なしの場合に比べ低レイノルズ数で生じる.擾乱を与えた場合R^*(=Re/Rec)≒5.5で進行波動が消え,スパイラルTG渦のみの状態となる.微小擾乱の振幅量が増すと,撹乱消滅が発生するReは擾乱なしの場合に比べ低くなる.撹乱消滅現象が生じるまでのシナリオは,擾乱なしの場合には周期変動→準周期変動→カオス→準周期変動→周期変動→撹乱消滅となるが,擾乱を与えた場合には周期変動→準周期変動→カオス→周期変動→撹乱消滅となる.撹乱消滅現象発生後においてReを増加させてゆく時,擾乱を与えた場合,擾乱なしの場合に比べ低レイノルズ数でせん断波動が発生する.以上のことから、微小擾乱を与えることにより乱れ状態の変化が低レイノルズ数側にずれることが知られる.
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