本研究では、境界層風洞を用いて層流境界層中に2個の乱流斑点を発生させ、それらの相互干渉の違いが斑点の成長や内部構造の変化に及ぼす影響を16チャンネル熊手型I型熱線プローブで解明するとともに、境界層平板のスパン方向全域にわたり多数の乱流斑点を発生させて境界層遷移の制御の可能性を探った結果、以下の結論を得た。 1. 2個の乱流斑点が融合する時、両斑点の中心断面近傍で相互干渉が生じるが、その領域を越えて個々の斑点の構造が他の斑点中に侵入することは抑制される。そのために、融合した斑点の水平断面形状は後縁部を除いて単独の斑点の輪郭を重ね合わせたものとほぼ一致する。 2. 並進する2個の斑点が融合する場合、融合部の上方への成長が促進される。その成長には斑点後縁側よりも前縁側からのエントレインメントが大きく寄与する。一方、流れ方向に位相差を持って融合する場合、先行斑点の成長は単独の場合とほとんど変化しないが、先行斑点の静穏領域に侵入した後続斑点は上方への成長が抑制され乱れが弱められる。後続斑点の減速領域が先行斑点の乱流領域後縁の直後に位置する時、その速度欠損の値は最も小さくなる。 3. 乱流斑点は流れ方向に伸びた多数の筋状の構造からなり、増速領域と減速領域が千鳥状に並び、斑点先端部の構造は最も古く、斑点の成長に寄与する内部構造は翼端部および後縁部で新たに形成される。 4. 斑点翼端部には比較的強い減速領域が存在することが多く、二つの斑点の融合により両者の中間に非常に強い減速領域が形成される。 5. 多数の乱流斑点を同位相で形成した場合、乱流境界層の速度分布が達成された後でも、境界層の上層部では斑点の発生に同期した周期的な変動が観測された。一方、隣り合う斑点間に位相差を与えた場合、同位相の配列に比較して遷移の進行が早められる。
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