研究概要 |
高温及び低温液体を入れた二つのタンクを細長い管でつなぎ,管内の液体に脈動を与えると,高温側から低温側への熱伝導が大幅に促進される.この装置について,昨年度行った管束による伝熱特性解析結果を論文にまとめた.波状管についての結果も論文にまとめるべく準備中である.今年度は先ず,管内での熱伝達機構を詳細に調べ,管壁に比較的近いある断面部分で熱が低温側から高温側に(通常とは逆向きに)輸送される理由を検討し,流体脈動変動と温度脈動変動の間の位相差がπ/2を超える部分でこの現象が起こっていることを確認した.この確認後,これらの目に見えない現象を説明するための可視化方法を中心に研究した.その際,専門知識をもたない学生などの初学者にも理解が容易な可視化法であることに特に注意した.そのためにはプリミティブな量を用い,一つの画像で多くの情報を表現するのではなく,表現する量を選択し,制限すべきであるとの結論に達した.そしてこの現象に特徴的な量,つまり上述の流体脈動と温度脈動の間の位相差を分かりやすく表現する方法を検討した.この目的のためにはそれぞれを異なる色のワイヤフレームで表現したアニメーションを用いるのがもっとも分かりやすいことが分かった.熱輸送のメカニズムを表現するために,エンタルピの流れを仮想的な熱粒子の運動に置き換えてアニメーションで表現した.この装置による熱輸送のメカニズムの定性的説明は以前からあったが,基礎式を解いた結果を定量的に表した本研究の結果は,定性的説明から受ける熱粒子の運動に対する印象とは大幅に異なるものであることを示した.具体的には熱粒子の横方向(流体脈動の方向に直交する方向)の運動はごくわずかで,流体脈動の方向の運動の大きさと比べるとほとんど無いに等しい.しかしこのごくわずかの横方向の運動が重要であり,これが大幅な熱伝達促進につながることを視覚的に示すことができた.
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