研究概要 |
本研究は極超音速輸送機やスペースプレーンの開発にとって鍵となる高温気流による熱負荷時の空気力学,および環境対策としての超高温気流による物体の表面改質に関する基礎データの蓄積にある. 平成10年度は高エンタルピー風洞の一種である二段隔膜・断面収縮型の衝撃風洞作動筒内における衝撃波,接触面,膨張波の挙動を数値計算と実験により解析した.そして作動筒を進行する接触面の変形に着目した.これは作動筒管端部からの反射衝撃波がこの接触面と干渉し再度反射することにより管端部に生じる高エンタルピー気体に影響を与えるためである.その結果,この接触面の変形は主に断面収縮部における衝撃波の湾曲に伴うリヒトマイヤー・メシュコフ不安定が原因であることが分かった.なお,作動筒がある程度長いと,この接触面の変形はその前方部が平坦化することが分かった.今後,この接触面と反射衝撃波の干渉現象を確かめる必要がある. 一方,衝撃風洞よりも気流持続時間が長く,高エンタルピー化が容易なアークプラズマ風洞の設計・製作を開始した.衝撃風洞の真空タンクを活用するもので,当初は単原子分子気体のアルゴンを作動ガスとする高温気流風洞である.本風洞は試運転の段階にあり,ガス流量,プラズマ化のための電圧,電流などの運転条件によって気流の状況が大きく変化するため,その特性を調査している.真鍮製の球頭円柱および円錐円柱の物体をこの流れの中に挿入し,物体周りの気流の状態や表面の変化を調べている.今後,分光分析を行い気流の温度や分子の励起状態などの詳細な調査が必要である.
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