研究概要 |
前年度に設計したアークプラズマ風洞を実際に製作した.そして風洞の不具合点を改良するとともに本風洞の気流の特性を調べた.また本風洞を用いて,高温気流が金属合金の組成変化に及ぼす影響について調べた.具体的には,風洞の設計マッハ数をアルゴン(Ar)など単原子分子気体に対し20としたが,真空タンク圧力が十分に減圧できず,ノズル内で流れの剥離が生じて安定な流れ場を達成できないことが分かった.そこで,設計マッハ数7のノズルを新たに製作し,安定した流れ場を作ることができるようになった.次に,この風洞による高温気流特性を今年度購入の分光器を使い調べた.200〜800nm中性ArおよびArイオンに特徴的なスペクトルを10種ほど選択し,ボルツマンプロットによる気流温度の推定を行った.その結果,アルゴン分子の励起温度が2000〜3500K程度であることが分かった.ただし,この温度については流れの平衡性も含め今後さらに詳細に調べる必要がある.さらに,この高温気流中に銅と亜鉛の合金である真鍮を数分間さらし,高速かつ高温の気流がこの金属組成に及ぼす影響について,X線マイクロアナライザを使って解析した.流れの前方側で亜鉛成分の含有割合が増加し,背面側では逆に銅成分が増えていることが分かった. 一方,高温気流のような特殊な環境下においても,故障など気にすることなく気軽に利用できる安価でコンパクトな力天秤の開発を進めてきた.リング構造を利用したもので,揚力と抗力の検出にお互いの干渉が小さくなる天秤を試作した.この天秤にモーメントも検出できるようにして,それを低速風洞内でピッチング運動するデルタ翼に適用しその有用性を確認した.
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