研究概要 |
本研究の主眼は,壁乱流の自己再生サイクルに着目して,その乱れの生成・維持のメカニズムを解明することである。 本研究の2年度目である平成11年度には,以下の点に取り組んだ。 まず,自己再生サイクルの主要過程であるストリークの不安定性を線形安定性理論により調べ,ストリークの不安定化の条件,不安定モードの空間構造,及びその不安定による流れ方向渦度の生成メカニズムを明らかにした。さらに,ストリークを模擬した波状渦面の線形安定性を解析的に調べ,ストリークの不安定化の機構を理論的に説明した。 次に,壁面乱流の自己再生サイクルを表す定常解及び時間周期解の存在の有無を調べるため,平面クエット乱流の直接数値シミュレーションを行った。乱流状態を強く拘束し,可能な限り秩序が現れる流れを得るため,流れ方向とスパン方向の計算領域寸法L_x,L_zを乱流が維持される限界まで小さくすると同時に,レイノルズ数Re=U_wh/v(U_w:2壁面の速度差の半分,h:流路高さの半分,v:動粘性率)もできる限り下げた。その結果,乱流状態はおよそRe<370では存在せず,Re=370においてはL_x=3.2π,L_z=1.6πで準周期的な秩序だった乱流変動が実現された。現在は,相空間においてこの準周期解近傍の解の時空間構造を直接数値シミュレーションによって調べており,得られた結果からは平衡解及び時間周期解の存在が示唆されている。そこで,これらの平衡解及び時間周期解を数値的に求めるため,Newton法による平衡解計算プログラムを作成すると同時に,直接数値シミュレーションによって時間周期解の探索も進めている。
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