本研究室既設の小型気象風洞に(1)測定部天井の加熱平板化、(2)排気ダクト増設、(3)測定部トラバース装置の高精度化、(4)温度成層形成装置の高出力化、などの改良を施した後、既存の動的乱流発生装置と組み合わせて、風洞測定部内に安定成層をなした強い乱流場を形成した。その乱流場の統計的基本特性を温度流速計と自作の3線式プローブを用いて調べた結果、以下のことが明らかになった。 (1) 上層が高温となる直線状およびステップ状の温度分布を有し、かつ速度勾配のない一様な安定成層場が実現された。このときの最高温度勾配は直線状分布の場合30K/m、ステップ状分布の場合83K/mであった。また乱流フルード数はそれぞれFr_λ=187、163であった。 (2) 乱流強度は通常の格子乱流場のものに比べ1桁以上大きく、測定部最下流においても10%を超え、大気乱流に匹敵する強い乱流場であった。 (3) 乱流レイノルズ数は約250であり、乱流本来の普遍的特性が十分明確に現れる乱流場であった。 (4) 速度および温度スペクトルには慣性小領域が一桁以上の広い波数帯域にわたり明確に認められた。 (5) 安定成層により生じる浮力の抑制効果は低波数の大規模渦のみに作用していた。 これらは夜間接地境界層の乱流特性と大気安定度を十分模擬し得るものである。 また、微細乱流渦の直接測定を目的として、多線格子型プローブを新たに製作し、動的乱流発生装置を用いて実現した高レイノルズ数を有する中立乱流中で瞬間速度場の多チャンネル同時計測を試みた。その結果、以下のことがわかった。 (1) 速度勾配2方向成分の分布により、微細渦の通過を瞬間像として捉えることができた。 (2) 微細渦はその近傍にエネルギーの高散逸領域を伴っている。 (3) 微細渦の半径は、コルモゴロフスケールの10倍程度という従来の数値計算結果を支持する値を得た。
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