本研究室既設の小型気象風洞に動的乱流発生装置と温度成層形成装置を組み合わせて、安定成層をなした強い乱流場を形成した。また、その乱流場の特性を調べるため、デジタル温度流速計とI-X3線式プローブ、他チャンネルプローブを製作・検定し、それらを用いて計測を行った結果、以下のことが明らかになった。 1.上層が高温となる直線状温度分布(温度勾配30K/m)を有し速度勾配のない一様な安定成層中で乱流レイノルズ数が300に及ぶ高レイノルズ数乱流場が実現された。その特性は夜間接地境界層の乱流特性と大気安定度を模擬し得るものである。 2.その速度および温度スペクトルには慣性小領域が一桁以上の広い波数帯域にわたり存在し、さらに熱流束コスペクトルのピークがその慣性小領域低波数側に位置するなど、乱流普遍法則や乱流本来の慣性運動による熱輸送を詳細に調べられる場が初めて得られた。 3.擾乱フルード数は強安定の臨界値より大きく弱安定な場を示しているにもかかわらず、浮力による鉛直変動の抑制が明確に認められる安定乱流場であった。また、その浮力効果は低波数の大規模渦のみに作用していた。 4.構造関数のべき指数が示す傾向は中立乱流に関しては他の観測例を指示するものであったが、安定成層乱流においては、より間欠性が高められていることを示した。 5.多チャンネル計測や条件付き計測により、DNSの結果を支持するような10η程度の直径を持つ微細秩序渦が検出された。これらを波数ごとに見ると高渦度領域は慣性小領域まで存在するのに対し、高散逸領域は高波数領域にしか見られなかった。一方、熱輸送は高波数では弱く、慣性小領域で顕著であった。
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