研究概要 |
遠心形血液ポンプ内の溶血を低減するためには、ポンプ内部の流れがどのようになっているかを理解すると共に、赤血球がなぜ機械的損傷を受けるかを明らかにすることが必要である。本年度は、これまでに試作した円錐・平板型のレオスコープを利用し、定常なせん断流中で生ずる溶血を調べた。その結果、高いずり速度ほど早い速度で溶血が進行することがわかり、これらの結果とポンプ内部の溶血との関係について検討を行った。その結果、定常せん断流中の溶血は、ポンプ内部の溶血に比べ、早い速度で進行すると推測された。ポンプの溶血実験では、赤血球はある時間間隔をおいて繰り返しポンプ内を通過する。そこで、赤血球の変形挙動を、円錐・平板間の定常的なずり流れと同時に、平行平板間の非定常的な振動流中においても測定し、定常流と非定常流における差異について検討した。その結果、赤血球の変形はある応力レベルを超えると大きな表面積の増加を示すようになり,降伏現象に類似な現象を示すことを明らかにした。非定常流においては、従来マイクロピペットによる吸引の実験で10msのオーダーの変形の遅延が報告されているが、ここで行った600Hzまでの強制的な非定常運動に対しては1ms程度の高速な流れの変化にも定常流とほぼ同様な変形を示したが、高い応力レベルでわずかに変形の低下が観察された。これらの結果については、本年7月末に開催される機械学会総会で報告する。一方、ポンプ内部の流れを調べるため、流脈注入法による流れの可視化を行った。その結果、ポンプ内部は一部に半径方向の逆流を含む複雑な流れとなっていることを明らかにし、さらに定量的な結果を得るためレーザー流速計やボンプケーシングカバーに埋め込むホットフィルムによる動的計測の準備を進めた。
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