研究概要 |
遠心送風機の発生騒音の中で,羽根車吐出流が渦形室壁面と干渉することで発生する翼通過周波数(BPF)成分に関して,(1)相関解析を用いた音源領域の調査,および(2)音源領域に対して小型圧電素子を用いた能動制御を施すことにより,低減化を指向した.BPF成分はその高次成分までが顕著な離散周波数成分として騒音スペクトル中に現れるため,このBPF成分を低減させる有効な方法を見い出すことは,送風機系全体の騒音特性に与える影響は極めて大きいと考えられる.実験ではまず,BPF1次及び2次成分に研究の焦点を絞り,騒音源と考えられている渦形室舌部近傍に多数の小型マイクロホンを設置することで,外部騒音圧波形との相互スペクトル密度を算出し,音源領域の分布を調査した.その結果,BPF1次成分の音源領域は,送風機の運転条件に依らず常に舌部頂点に存在するのに対し,2次成分の音源領域は舌部下面に局所的に存在し,しかもその部位が運転条件によって不規則に変化していることを明らかにした.2次成分の音源領域が不規則に変化する要因としては,渦形室壁面上を移流する非定常渦の影響と考えているが,詳細な検討は数値的な流れ研究を待たねばならない.次に,相関解析によって明らかとなった音源領域に,小型の積層形圧電素子を設置することで,渦形室壁面を直接逆位相で振動させて騒音レベルの減衰量を調査した.特に,従来より有効な低減化法が提案されていないBPF2次成分に関して本手法は極めて有効であり,離散的に現れる騒音成分を広帯域成分の音圧レベル値まで,20dB以上も低減させることが可能となった.この装置は,従来行われているスピーカーを用いた能動制御法と比べて装置が軽量かつ安価であることに加えて,操作性の良さや減音量の面から鑑みて,実用的かつ有効な制御法と考えられる.
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