研究概要 |
遠心送風機の発生騒音スペクトル中に顕著な分離騒音として表れる翼通過周波数(BPF)成分に着目し,その基本成分と高調波成分の同時能動制御による低減化法の確立を本年度の研究目標とした.本低減化法の背景には,従来の研究で明らかになっているBPF成分の詳細な有効音源領域調査があり,相関解析を用いた実験的研究により,基本周波数成分は渦形室舌部頂点近傍,高調波成分は舌部下流側に存在することが明らかになっている.そこで,各音源領域を積層形圧電素子により各々直接加振することで,基本成分と高調波成分の同時能動制御を指向する.ただし,音源での圧力振幅レベルの大きい基本周波数成分に関しては,圧電素子の直接加振のみでは有効な減音が得られなかったため,梃子の原理と板バネを利用した変位拡大機構を設計・製作して実験を行った.この結果,基本成分の音圧レベルを15dB以上も低減することができた.また,その条件下で2次成分や3次成分レベルを更に数dBにわたって低減する同時能動制御を行い,実用上有効と思われる結果が得られた.これにより騒音スペクトル中の離散成分はほぼ完全な形で除去することが可能となった.しかし,高次成分の制御時には非制御下の音圧レベルが逆に数dB上昇してしまう現象が確認された.この結果より,BPF高調波成分の発生機構に関して,羽根車吐出流と渦形室舌部とのポテンシャル干渉のような線形現象に起因するものではなく,舌部表面上で誘起された微細な移流渦などが原因となり発生する非線形的な音響現象であることが明らかになった.今後は本研究で開発した制御法により得られた減音量と,騒音伝播経路の周波数特性との関係を詳細に実験することで,能動的制御法と送風機幾何形状を変化させることによる受動的制御法を組み合わせた有効な騒音低減化法を提案することを研究の焦点としたい.更に,数値解析によりBPF成分の有効音源領域がどのように決定されるのかに関しても調査を行う予定である.
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