本研究は、白血球が微小血管の血管抵抗を上昇させるメカニズムを流体力学的に解明することを目指している。本年度は、1.実験データを整理し、従来の研究成果と合わせて、生体内微小血管内における白血球の挙動をまとめ、2.白血球の個々の挙動が血管抵抗に与える影響を数値解析により定量的に調べて、最も重要な因子について検討した。 1.実験データのまとめ:白血球に関係した3つの現象:a)毛細血管内における白血球背後の赤血球列の形成、b)白血球の細静脈壁への粘着現象、c)白血球の活性化の影響、のそれぞれにつき、生体内微小血管内における白血球の挙動を整理した。 2.血管抵抗の評価:a)、b)、c)のそれぞれの場合について、微小血管内の流れを数値的に解析し、白血球の挙動が微小血管の血管抵抗をどの程度増加させるかについて、定量的に評価した。a)の解析結果は、ガラス管を用いて得られた実験結果をよく説明し、生理的な白血球数のとき血管抵抗は白血球がない場合の2.5倍程度まで増加する可能性を示唆した。b)の解析結果は動物実験結果と定量的に一致し、白血球の血管壁への粘着によって血管抵抗は2倍程度までなりうることが分かった。c)について、微小血管入り口近傍における白血球の停滞は血管抵抗に数%〜十数%程度の寄与を与えることが分かっている。以上から、細く長い毛細血管ではa)の寄与が重要であり、直径が10ミクロンのオーダーの細静脈ではb)の寄与が大きいことが推察される。今後、この解析を血管網に広げることが必要であろう。
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