研究概要 |
本研究は,圧縮性乱流で重要な要素である衝撃波と渦の干渉現象や渦による衝撃波の生成機構などを,渦輪を用いて実験的に調べ,その機構を解明する目的で行なっている.複雑な渦の絡み具合などを見るために,両眼視差を利用したステレオシャドウグラフ法を開発し,これを利用して奥行き感を持つ立体像を得て複雑な現象を明確に捉えようと試みている. 本年度は,剛体球に向かって正面から衝突して行く衝撃波と渦輪の運動およびそれらの干渉現象を調べた.渦輪の側面方向からの観測は通常のシャドウグラフ法によって行い,ステレオシャドウグラフ法は斜方向からの観測に使用し,現象の三次元的な様子を捉えることにした.相互作用現象に及ぼす物体のサイズの影響を見るために,3つの異なる直径の球について調べた.得られた主な結果は次の様である. 渦輪が球に接近すると,渦輪の周りの流れによって球面上に剥離渦が生じ,剥離渦の上流側に渦核と球面を結ぶ形で衝撃波が生成される.この衝撃波は時間の経過と伴に上流方向に膨張して球面波状になり進行して行く.一方剥離渦は表面から離れて強い渦輪になり,進行渦輪と相互作用をしてそのサイズが大きくなる.この変形の間に両渦輪の間には様々な形のショックレットが生じ,最終的に両渦核を結んだ面衝撃波が生成される.その後両渦輪は衝突運動と追い抜き運動を行う.球の直径が小さい程,衝突運動が長く続き,大きいほど剥離渦輪が主渦輪を通り越して上流側に進むその移行速度が早い.これらの一連の運動によって音が放射されているが,剥離渦輪と主渦輪の相互作用によってそのサイズが変化する状態の時に,最も大きな音が放射されている.その放射音は下流方向に強く,上流方向には弱い.
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